業界・企業に特化し、誰よりもリアルで最新の情報を持つトップエージェント。エージェントファインダーで紹介する各転職エージェントは、採用決定率を高めるためにどのような工夫を凝らしているのか。エージェントファインダー代表取締役・粕谷暢司が、特定の業界や企業への高い内定率、リピート率を誇る転職エージェントにその秘訣を伺いました。
———さん
株式会社————–コンサルタント/スペシャリスト
デジタル時代で10年後も勝ち続けるキャリア設計を支援する。
転職、副業、就活を横断したコンサルティングに従事。リクルートの人材ビジネス、——- [博報堂DY] ——-グループの株式会社——-[アイレップ]——-等を経て現職。デジタル知見を活かしたマッチングが得意。
趣味は面接同席。マーケティングメディア——- [MarkeZine] ——-にて「————–が突撃!」連載中。
twitter:@————–
※エージェントファインダーに会員登録いただいた方に、コンサルタントのプロフィールを公開します。但しご経歴によっては、情報を提供できない場合がございますことをご了承ください。
マーケティング業界で、扱う対象がSEMからHRに変わっただけ
粕谷:
—–さんは、マーケティング領域に特化したキャリア支援を行っています。ご自身の経験や人脈がそのまま生きていますね。
—–さん:
今の仕事を始めたときから、そもそも「人材ビジネスをやろう」という感覚はありませんでした。 これまで、—[博報堂DY]—グループの株式会社—[アイレップ]—など、マーケティング業界で経験を重ね、特にリスティング広告やSEOなどのSEM(サーチエンジンマーケティング※検索エンジンを利用したマーケティング活動)領域でキャリアを形成してきました。
事実、テクノロジーの進化による業界変革が激しく急成長している反面、人材育成や適正配置はそのスピードに追い付いていないというギャップが存在しています。マーケターとしてキャリアを形成するよりも、自身は人材観点から業界に関わった方が、業界全体の活性化に貢献できるのではないかと考えたのです。
なるほど。変化の流れが速いからこそ、先を見据えたキャリアを作っていかないといけない。そこで指南役が必要だと考えたのですね。
はい、複数社を経てキャリア形成するのが一般的な業界において、業界を横断したキャリアの壁打ちニーズは多いと感じています。なにより、世の中のデジタル化に伴う業界変革の中にいるマーケターのキャリアに寄り添いたい、という想いが強いです。よって、人材業界に転身したというよりも、同じマーケティング業界にいながら、“SEM”を“HR”に変えただけ、という感覚です。
業界に精通しているからこそ、現場のリアルなニーズを掴める
粕谷:
同じ業界内にいる人間として動く。そのスタンスだからできる、—–さんならではのキャリア支援は何ですか。
—–さん:
人事担当者と向き合うだけではなく、経営陣や現場の責任者と直接連携し、「こんな候補者がいるので場をつくりますよ」と機会創出をすることも多いです。普段からマーケティング界隈の方々とコミュニケーションをとっているので、「事業のデジタル化を推進できる経験者を役員クラスで探したい」「大型案件のコンペが決まったので、組織を大きくしたい」といったニーズをタイムリーに掴めています。経営陣や一緒に働く現場と直接対話することにより、スピード感を高めながらも入社後のミスマッチを少なくできていると自負しています。
書類選考、人事による一次面接などのプロセスを飛ばしていくのですね。
もちろん正式な選考ルートで紹介するケースもあります。どちらの場合でも現場とのリアルな接点を大切にしています。ただ、採用実績を重ねるうちに、「—–さんのご紹介は外れない」「人事が介在するより速いから直接進めてください」などといった声が増えてきています。
元々、自身がいた業界、やっていた職域なので、どういった経歴・スキル・タイプの人が活躍するかキャッチアップしやすく、共通言語でコミュニケーションできます。常にCVR100%を目指しています。
採用実績につなげるには、現場のニーズと転職者の適性とのマッチングが不可欠です。転職者の理解はどう深めているのでしょうか。
転職、副業、就活のキャリア相談で今まで3,000人以上のキャリアの壁打ちをしてきました。領域をマーケティングに絞っていることもあり、マーケターとしてのキャリアの描き方は一定のパターンが存在していることを熟知しています。
「短期的に年収を上げたいのなら、△△社のこのポジションが最適」 「現職からの直近のキャリアチェンジは難しいけど、〇〇社のこの職種で◯年経験を積めば、次の次でルートが見えてくる」 など、流動性が高い業界だからこそ、さまざまなケースが考えられます。自身の中にキャリアパターンが就活シーンからエグゼクティブ層まで蓄積されているので、事実ベースで役に立つアドバイスできるはずです。
転職者の人間理解を深め、転職支援ではなく「キャリア設計支援」を行っている
粕谷:
転職者とのコミュニケーションで意識していることはありますか。
—–さん:
ファーストコンタクトでは、職務経歴書の文字情報以外に“その人自身の理解”を深めることを強く意識しています。文字列だけでのマッチングはAIで充分ではないでしょうか。
「〇年に部署異動したのは自分の意思で選んだのか。実際異動してどうだったか」 「この時期にMVPを取っているけれど、取ったあとの心境の変化は? 翌年に目標未達成だったのは何が要因なのか、それをどう感じたのか」 など、物事の背景を聞いていくことが多いです。
少し踏み込んでパーソナルなことを聞いていくとご自身の志向整理にも繋がりますし、その人が活躍できたり能力を発揮できない環境要因が少しずつ見えてきます。業界内のどこにアサインするとキャリアが伸びやすいのか、適正なアロケーション(割り当て)が見えてきます。
本人は「事業会社のマーケティングに挑戦したい」「年収を上げたい」など希望していても、これまでのキャリア形成の分析から中長期的に輝く環境は実はこっちなんじゃないかと客観的にアドバイスできるようになります。本人の再現性あるインサイトを理解できれば、企業側に紹介する際も、職務経歴書だけでは見えないスペック外の立体的な魅力を伝えられます。私の介在価値としては、その人も気づいていない良さを解釈し、整理し、機械創出をすることだと思っています。
人間理解そのものですね。
私が人材バックグラウンドではなく、マーケティングに携わってきたことが大きいと思います。常に「この人をどの企業と掛け合わせると双方のメリットが最大化するのか」マーケティング視点で考えています。
一緒にキャリアを棚卸ししてくれる存在は、転職者にとってもとても心強いと思います。
であれば嬉しいですね。私がやっているのは短期的な転職支援ではなく「100年時代におけるキャリア設計支援」です。社会人として約50年キャリア形成をしていく中で、ストーリー性のあるキャリアづくりの手助けをしたいと思っています。
マーケターキャリアのサンプル数をたくさん見てきたので、その方にフィットする選択肢を可視化し、正しい意思決定の精度を高めて頂くお手伝いをするために、自身がマーケティング業務に携わっていたとき以上に業界情報のインプットを行い続けています。
人材の最適配置で業界を活性化したい。入社後の活躍が本当のゴール
粕谷:
転職者が応募先企業を決めてからは、どのようなサポートをしていますか。
—–さん:
面接対策のような入社をゴールとしたコミュニケーションはしません。意識しているのは、「入社後に勝てるキャリアを築こう」ということ。恋愛に例えるのであれば、付き合うためではなくて、付き合った後にハッピーになることが大事。相手に合わせて自分を最適化して付き合えたとしても、それで良いんでしたっけ、というお話です。私自身も、過去に何度か転職エージェントにお世話になったことがありますが、選考が進んでいくうちに、「担当のキャリアコンサルタントのヨミ表に入っている」と感じてしまっていました。「自身のキャリアよりもノルマ達成の方が大事なんだな」と感じた、あの思いを、私が関わった方には持って頂きたくありません。
その方がもっと活躍できる環境があるなら、自身が携わっていないルートの選考中企業のアドバイスもフラットに行っています。日々のキャリア設計で得たナレッジを提供して介在価値が出るなら、その方が業界にとって良いと思うからです。
自分が決めなくては…という、転職エージェントの“ノルマ”から解放されているんですね。
それはやっぱり、人材ビジネスに携わっている感覚がないからでしょうね。 当社経由で転職が決まらなくても、「相談できてよかった」「自分の考えが整理された」などポジティブな体験は自然とご紹介など次のご縁につながるので、いろんな方のキャリア設計に携わること自体が“マーケティング活動”になっています。なので、強引な転職支援は決してしません。悪評判が怖いです(笑)。転職といっても社内異動はリスクが少ないわけですし、副業でキャリアを広げるなどいろんな選択肢がある、というユーザー目線を大切にしています。
最初にもお伝えした通り、私が目指すゴールは、マーケティング領域で働いているマーケターの最適配置の支援を行うことで、業界をより活性化させることです。 伸び悩んでいたアスリートが他の種目に挑戦して覚醒した事例はたくさんありますよね。私も、本人が気づいていない可能性をアロケーションすることで業界全体をより魅力的にしたいんです。活躍する人を増やすため、精度の高い地に足のついたマッチングを創出することが重要です。
すごく勉強になります。 サポートした転職者とは、入社後もコミュニケーションをとっていますか。
そうですね。入社後の状況把握は、PDCAの“Check”の部分です。 入社したらこんな世界が待っているだろう、という仮説をもとにマッチングを行うので、その仮説を検証しなければ単なる自己満足です。もし仮説と違ったならどう方向転換すべきか、きちんとCheckすることで、次の機会創出の際に、再現性の高い“Plan”を生み出せます。再度言いますがCVR100%を目指してます(笑)。
最後に、転職エージェントを選ぶ際、—–さんから転職者へのアドバイスはありますか。
人と人なので相性があります。自分のキャリアを“商品”として見ていないか、本当に親身になってくれるかをよく比較した方がいいでしょう。一度書類選考を出した企業には、ほか経由でも1年間は再選考できないのが通例です。複数企業の求人情報を並べて「とりあえず全部に書類を出しましょう」というところは注意して頂きたいです。この進め方だとマッチングスキルいりませんからね。どのパートナーと一緒にキャリアを考えたいかを、しっかり吟味してから行動してほしいですね。マーケティング感覚を持ち、エントリーチャネルを最適化することも大切です。